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「楽琵琶」について
平安朝末期から鎌倉初期にかけては、琵琶がとくにもてはやされた時代でした。名手がたくさん現れた時代でもあり、天皇、摂関家もこれを弾かれ、楽人、僧侶など音楽に関係のある多くの人々も競ってこれの習得に励みました。『三五要録』(さんごようろく)を編纂した藤原師長(1138-92 ふじわら の もろなが)も琵琶の大家でした。琵琶の起源は、古くイランに発生して、シルクロードを経由し東へと伝えられ、奈良時代頃、藤原貞敏(807-67 ふじわら の さだとし)により琵琶譜を唐から持ち帰り、海を渡り日本に伝えられました。後に琵琶をめぐる説話が数多く生まれ、文芸の世界では有名になりました。雅楽の琵琶は「楽琵琶」(がくびわ)と呼ばれ、正倉院に収蔵されている四絃琵琶がそのままの姿で現在まで伝えられています。「三五」とは全長三尺五寸にちなんだ楽琵琶の異称です。
また、奈良の正倉院にはその源流を、それぞれ中国(阮咸)、西域(四絃)、インド(五絃)に求めることができる琵琶が残存しています。
古より神仏や幽冥の世界に通じ、人の心を慰め和ませるために楽を奏しておりました。
芸はつたなくとも(名人に憧れつつも)、今も生き続けるその背景に流れる精神を大切に、耳を澄まし琵琶を奏してゆきたいと思っております。
中村かほる